原案:剣世 炸/加賀 那月
          著:剣世 炸
          
          
          Episode7「三日月同盟」 第16話 〜戦いの終結〜
          
          「これで終わりだ!ヴァジュラ!!」
          
          “ズシャ…”
          
          「ギイャャャャャャャャ!!!!」
          
           ショートソードが、深々とヴァジュラの身体に突き刺さる。
          
           瞬間移動の能力で、ヴァジュラの虚を突いたアルモの攻撃により、再び黒い霧に包まれたその身体に、俺が間髪入れずにショートソードの一撃を繰り出したのだ。
          
           アルモの攻撃が成功していなければ、恐らく鋼鉄よりも硬いであろうヴァジュラの身体に、ショートソードの一撃を食らわせることは叶わなかっただろう。
          
           それが実現したのは、偏に俺がアルモの持つ剣にかけた『ライトエスパーダ』の能力が、アルモの高い身体能力により十二分に発現され、ヴァシュラの身体能力を著しく低下させることができたからだ。
          
          “ドスン!!”
          
           断末魔と共に、ヴァジュラは右手に持つクレイモアをその場に落とした。
          
          “ズシュ…”
          
          “バタン…”
          
           そして、それを確認した俺がショートソードをヴァジュラの身体から抜き去ると、激しい鮮血がほどばしり、ヴァジュラはその場に倒れた。
          
          「…やったわね!!」
          
          「ああ………!!シュー達は!?」
          
          「…みんな無事みたいよ、ほら!!」
          
           アルモの指さす方向を見ると、シューを先頭に、サリットとザイールがこちらに向かって手を振りながら歩いて来ていた。
          
          「…俺たちの戦いが終わるのを待っていたようだな」
          
          「ええ」
          
           そう言いながら、シュー達の元へ向かう俺とアルモ。
          
           そして、数分もしないうちに、俺たちはシュー達と合流した。
          
          「…アコードとアルモの戦い、見させてもらったぜ。俺たちの戦いとは、次元が違うというか、何というか…」
          
          「そんなことはないと思うが……シュー達こそ、ネクロマンサーだった副長との闘い、大変だったんじゃないか?」
          
          「まぁ…最初は焦ったけど、副長をどうにかすればいいってすぐに気づけたから…それに、サリットとザイール殿のサポートもあったし!」
          
          「奴が魔法を放った直後、私たちは3人で奴に突撃したの。ザイールさんが魔法で私とシューの武器や身体を強くして…あとは、アコードも知っている私とシューの連携攻撃で、どうにか…ね」
          
           得意とする投剣術で使う短曲剣(マインゴーシュ)を片手で投げてはキャッチしを繰り返しながら、サリットが苦笑いをする。
          
           合流した3人を見ると、全身ボロボロで、至る所に生傷があるのが分かる。
          
           サリットが最後に『どうにか…ね』と言ったことが、戦いの激しさを物語っているように俺は感じた。
          
          「さて、これからどうするの?」
          
          「みんな…フォーレスタ村での話、覚えているか?」
          
          「??」
          
          「そもそもここにきたのは、フォーレスタ村の通信鏡にここからの救難信号が入り、状況を確認する必要があったからだ」
          
          「で、村長が言うには、本部が壊滅している場合、他の支部に本部機能が移転する、ということだったはずだけど…」
          
          「本部機能が移転するのは、本部が壊滅し、尚且つ本部のスタッフが全員消息を絶った時のみだ」
          
           俺たちの会話を黙って聞いていたザイールが、その場に立ち語り出す。
          
          「死んだ総帥が『万が一』のときに探すよう私に言っていたものを私が発見できれば、恐らく同盟本部の機能を蘇らせることができよう」
          
          「それって一体…」
          
          「それが何なのかは分からない。だが、恐らくは私が総帥となるためのモノ、或いは場所である可能性が高い」
          
          「…ザイールは、ここに残りそれを探す、という訳ね」
          
          「ああ。こうなってしまっては、総帥代理である私が総帥となるしか、三日月同盟本部を存続させる術はなかろう?」
          
          「…分かったわ…」
          
          「私の手伝いを考えているのなら、それは無用だ。三日月同盟総帥の秘密は、総帥となる者しか知り得てはならないとされている。それが例え、創設者であるクレスの子孫であったとしても…だ」
          
          「ここからは、ザイールと俺たち4人は別行動になる、という訳だな」
          
          「すまない…」
          
          「ザイール殿。謝ることはありませんよ!」
          
          「シューの言う通りです。きっと総帥となって、私たちを導いて下さい!」
          
          「2人とも…ありがとう。2人と出会い、共闘できたことは、私の一生の誇りだ!」
          
           3人が、その場で堅い握手を交わす。
          
          「それじゃ、俺たち4人はアルモのテレポーテーションの魔法でフォーレスタ村に戻り、母さんと今後について練るのはどうだろう?」
          
          「そうだな」
          
          「アコードが思うようにしていいんじゃない?」
          
          「私も、君の意見に賛成よ」
          
          「決まりだな」
          
          「それじゃあ、テレポーテーションの準備に入るわ!アコードとサリットは私の手を、シューはアコードとサリットと手を繋いで」
          
           4人全員が両手を繋ぎ、1つの輪ができる。
          
          「ザイール!もう大丈夫だと思うけど、くれぐれも気を付けてね」
          
          「ああ。君たちこそ、道中気を付けて。ワイギヤとクレスのご加護があらんことを」
          
          『テレポーーーーテーーーション!!』
          
          “ピカッ”
          
           アルモがその身体から魔法を解き放つと、眩い光で周囲が満たされた。
          
           そして、その光が収まると、本部の礼拝堂にはザイールのみが残されていた。
          
          「…さて、俺は俺の使命を全うするとしよう。まずは…」
          
          「…」
          
           ザイールが魔法の詠唱を始めると、同盟本部全体が淡い光に包まれた。
          
          
          第17話 に続く